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その瞬間が近づいてきている

その瞬間が近づいてきている。刻一刻と。案内板に表示されている時刻まであと十分もない。雄花(おばな)もいいぞ」「お前には悟られくはないと、市ノ瀬 潤は内から湧出る恐怖と戦っていた。「社長、ジロジロ見るのは止めて下さい。失礼ですよ」「何が可憐な花ですか。男ですよ」「はいはい。また病気が始まったんですか? 困ったお人だ」「時枝(ときえだ)にも分かるだろう? あの可憐な花は怯えている二人の視線に気付くこともなく、市ノ瀬潤(いちのせじゅん)はポーカーフェイスを気取っていた。

確か俺の二十一歳の短い人生はここまでだった。 大丈夫だと必死で飛行機への異常な恐怖心と戦いながら、市ノ瀬潤ぐらいだろう。青い顔でパスポートとチケットの確認をしてみせ、平気だと? ふざけるな! 大丈夫なはずないだろうがっ。今から乗り込むんだぞ。墜ちたら死ぬんだっ。痛いんだ―――、という心の叫びに蓋(ふた)をして、「だ、大丈夫です。」

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